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アニメの巨匠に学ぶこと。

2009年01月23日

ビジネスの世界で生きるには、ビジネスモデルやら何やら、知っておかなきゃいけない知識や事例がある。しかし、その事業で「メシを喰う」ことができるようになるまのでの活動に、あまり賢い智恵は必要ない。ひとつひとつの活動を意味で縛ってはいけない。
そういうお話しを、日本アニメの巨匠達から学びたい。


先ずは、「機動警察パトレイバー」「イノセンス」などの作品で有名な押井守監督の発言 (週刊アスキー)である。


「監督は、観た方からどんなことを言われると、いちばんうれしいですか?」
押井:やっぱり、自分が全然想像もしていなかった見方をされると、うれしいですね。「えっ?」ということ、ありますから。とくに僕の作品を好きだっていう30代、40代の男どもはですね、根がまじめな人が多くて、一生懸命考えるんですよ。


押井:僕の仕掛けた罠をなんとか突破して、真実にたどり着こうとする。そのために何度も観てくれたり、DVDを買ってくれたりするから、ありがたいけど(笑)。なぜか彼らには、アニメにはなにか真相が隠されているのじゃないかと思い込んでいるフシがあるんですね。


押井:でも、そんなものはない。


押井:いや、あるのだろうけど、つくった人間でもよくわからないもので、何年かたたないとわからない。そう言うと今度は「煙に巻いてる」とか言われるんだけど。


押井:基本的には、いい思い、楽しい思いをしたいからつくるのであって、なかば無意識でつくっているんですよ。しかも、そういうときのほうが絶好調だったりするからね。


映画を観る側は、そのシーンや、そのセリフに、凄い意味を与えるために、凄い解釈をしようとする。
深い真相を読み取ろうとする。
しかし、作り手は、そんなに意味を求めていない。
無意識なときほど絶好調で筆が進む。
それが、クリエイティブの真実なのだと思う。
いちいち書き込むシーンの意味や解釈を考えていては、力ある作品はできない。
「喰うための作品づくり」は、「頭」より「身体」なのである。

ビジネスも同じだと思う。ビジネスモデルなんて、その成功に、後で理屈を付加したくらいなもので・・・。
会社や事業の立ち上にげは、頑張りや情熱と表現されるような無意識な行動が重要で、「頭」考えは、あまり役に立たない。
押井守監督が言うように「基本的には、いい思い、楽しい思いをしたいからつくる」のであって、こう解釈して欲しい、こういうビジネスモデルを確立したいという起業の発露は、失敗の大きな要因になる。


次は、知るヒトぞ知る宮崎駿監督である。
ジブリが出している「熱風」2009年1月号の中で、「日本の観客と世界の観客の違いを意識しているか?」という質問に対して、このように答えている。
宮崎:実は何もわからないんです。僕は自分の目の前にいる子供達に向かって映画をつくります。子供達が見えなくなるときもあります。それで中年に向かって映画をつくってしまったりもします。でも、自分達のアニメーションが成り立ったのは日本の人口が一億を超えたからなんです。つまり日本の国内でペイラインに達することができる可能性を持つようになったからですから、国際化というのはボーナスみたいなもので、私達にとっていつも考えなければいけないのは日本の社会であり、日本にいる子供達であり、目の前にいる子供達です。それをもっと徹底することによってある種の普遍性にたどり着けたらすばらしい。それは世界に通用することになるんだ、って。
※「内田樹の研究室」より抜粋



いまや世界がマーケットとなった宮崎駿作品であるが・・・
それは、日本にいる目の前の子供に向かって作っているのであって、
世界からの評価なんておまけみたいなもので、よくわからないという。
日本の人口が一億人を越えたから「アニメで喰えるようになった」だけだという。

後付で、日本のアニメビジネスがなんとかかんとかと解説をしたりもするが・・・
巨匠達の作品づくりに、世界に通用する小賢しいビジネスモデル論が入る余地なんてない。



世の中のたくさんのビジネスモデルを語り、分析するのも悪くはない。
開かれた世界の市場を目指すのも良い。
専門的な分野の人達を集めて、完璧な分業体制で事業に取り組むのも当然だ。
これだけの情報が世間を流通しているのだから、集めたくもなる。評論もしたくなる。
しかし、正しい議論ではあると思うが、その議論が、成功の近道になるとは思えない。



機能での差別化が困難な世の中で、起業や事業の立ち上げには、
「感覚=ソフトウェアよりフィールウェア」や「クリエイティブセンス」が重要になってくると予測される。
アニメの巨匠達が作品に立ち向かうように、事業に立ち向かう必要がある。
その時に、重要なのは、「既存のビジネスモデルを見つめる」ことではない。

押井守監督のように、宮崎駿監督のように、
常に、自分を見つめる、足元を見ることだ。
その延長線上に、ボーナスとしての世界市場があり、ビジネスのモデルがある。

執筆者: 中村修治/へそ社長