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「自殺大国・日本」のホントの病理っ。

2009年03月18日

平成20年度版「自殺対策白書」によると、平成19年度の自殺者は、3万3093人。これで、11年連続の、3万人超え。この状況を、「不可視の内戦」のようなものだと言ったのは、作家の辺見庸さんである。
見えないところで、日本には、内戦を超える戦いが繰り広げられている。

簡単に、平成20年度版「自殺対策白書」を要約しておく・・・。


ここ10年で30万人を越える日本の自殺者。
イラク戦争で亡くなった米兵はおよそ3500人(2003年3月~2007年5月)。日本の自殺者数は1年間でその10倍にのぼる。そのイラク戦争で亡くなったイラク民間人は2003年の開戦以来、ことし6月までの5年間に最多推計で約92000人である。内戦で否応なしに出る死亡者の数十倍もの自殺者が、日本には存在する。

自殺者数は、男性が女性の2.5倍。
平成19年の自殺者総数は前年から938人増加して33,093人。男性は前年から665人増加して23,478人。女性は前年から273人増加して9,615人となっている。男性の方が、女性より2.5倍ほど、自殺者数が多い。


そのうち、原因・動機の特定できているのは、2万3,209人(70.1%)。「健康問題」1万4,684人(63.3%)と最も多く、次いで「経済・生活問題」7,318人(31.5%)。次いで「家庭問題」3,751人(16.2%)が占めている。


ちなみに、日本の自殺率(平成16年~19年平均)を県別で見てみると、上位5県はこうなる。
秋田県→41.6
山梨県→41.5
青森県→36.7
岩手県→36.6
島根県→35.7
地方ばかりだ。
経済学者や医師、NPOなどでつくる「自殺実態解析プロジェクトチーム」によれば、平成16年~18年年の自殺者のうち被雇用者は24,208人。警察署別に、詳細な地区で見てみると、愛知・豊田、山梨・富士吉田、福岡・筑紫野、北海道・苫小牧など重層下請け構造が存在する地域に自殺者が多く、長時間労働、24時間交替制、人員整理などが要因と推測されると分析している。

自殺者の大半は、自宅を死に場所に選ぶ。
自殺を選ぶ場所は、「自宅」が1万8,110人(54.7%)と最も多く。次いで、「乗物」が2,605人(7.9%)、「高層ビル」が1,884人(5.7%)。「海(湖)・河川」は、1,770(5.4%)。「山」は、1,622人(4.9%)。



日本の自殺は、首つりが60%以上。

自殺の手段は、縊頸=首つりが多く、男性では約65%、女性では55%を占める。女性は、服薬、飛び降り等が、男性に比べて多いのが特徴。首つりが総体的に多いのは、日本特有の傾向だという。

主要7カ 国(G7)で一番の自殺大国・日本。
諸外国の自殺死亡率については、リトアニアが38.6と最も高く、次いでベラルーシが35.1、ロシアが32.2となっており、日本は23.7で8番目となっている。間違いなく「日本は、先進諸国の中で一番の自殺大国」である。


これを「不可視の内戦」だと評した辺見庸さんは、月刊『現代』8月号(講談社)の中で、次のような指摘をされている。

「貧困の原因を個人の努力・工夫不足のせいにする昨今の傾向と同様に、自殺原因の解析でも、国家と社会の病弊を故意に捨象し、個人の心身の病を強引に“真因”としているように思えてならない。希望の見えないこの社会では、戦闘こそないかもしれないが、こころは依然、内戦的緊張にさらされている」と・・・。


この「不可視の内戦」には、公表されない「不可視の数字」がある。
自殺未遂者の実数である。その内容を、公表しているものは少ない。


そこで、「自殺未遂者」の実数を知るための参考となる資料を発見した。目的地域の救急活動記録を元に自殺企図者(自殺未遂者・自殺死亡者)の特徴を分析し,今後の自殺対策に資することを目的とした「大阪府岸和田市における救急活動記録からみた自殺企図者の実態調査」である。


2004年4月から2006年3月までの岸和田市消防本部の1年間の救急活動記録から自殺だと特定できる246例(延べ人数)・196人(実人数)の自殺企図者(自殺未遂者・自殺死亡者)を分析したもので、自殺未遂者の実態を測る材料となる。


その調査では・・・
結果196人の自殺企図者のうち自殺死亡者は52人(男性32人,女性20人)。
自殺未遂者は144人(男性32人,女性112人)。
そのうち2回以上にわたって自殺企図を繰り返した実人数は29人(男性3 人,女性26人)。


全国平均のように男女比2.5対1ではないので、単純にかけ算は、できないとは思うが、自殺者1人がカウントされるに至る背景は、ここから推測できる。
男性は、自殺者数と同等の数のヒトが、自殺未遂者として病院に運ばれている。女性は、自殺者数の約6倍。自殺未遂まで含めた総数を見れば、男性64人に対して女性が132人。
女性が、男性の2倍、自殺という行為に及んでいることがわかる。実際に死に至った自殺者数の男女比とは、逆転の現象が現れているのだ。

「死にたいのに死ねないヒトたち」は、
女性の方が、男性より2倍以上多い。

その女性達の25%は、2回以上の自殺未遂を起こしている。
そして彼女たちは、自殺の手段に、「服薬,四肢切創」等→致死率の高いものを選択しない。

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「死にたくないけど死ななきゃしょーがない」中高年男性と、
その倍の数の「死にたいけど死ねない」若い女性がいるのが、
自殺大国・日本の実態なのだ。[/h]


当然、債務や経済的事情に追い込まれて増える自殺者数を減らさなくてはいけないと思うが、その3万人の巨大な分母となっている「死にたいけど死ねない」人達に目を向けていないと自殺問題の本質を見逃すことになる。


男女の自殺率格差が3倍くらいあることについて「女は家事・育児をする特性がある」「女には母性があるのが当然」など、『女は生命、男は戦争』という論調で、男女の自殺率格差を解説する向きもあるが・・・自殺未遂まで入れると、その実態は、大きく様相を変えることになる。


自殺対策支援センターライフリンクの「日本の自殺の現実」というサイトの表紙には・・・
ひとりの自殺、あるいは自殺未遂に対して、その周囲にいる5~6人以上が深刻な心理的影響を受けると言われています。未遂を含めた自殺者数が年間30万人いるということは、日本では毎年200万人を超える人たちが自殺による深刻な影響を受けていることになります。
と明記されている。

自殺を実行し病院に運ばれても原因を自殺だと断定されない場合や、病院まで行くまでもなかった自殺未遂を合わせると、その総数は、自殺者数の約10倍あると予測している。
よって日本では年間・・・
10万人の男性+20万人の女性が、なんらかの形で自殺を謀っているということだ。


経済的な社会的ストレスで増える一方の「死にたくないけど死ななきゃしょーがない」中高年男性の自殺対策は、なんらかの経済対策によって、改善が見込めると考える。健康面の問題でも、医療技術の進化や、カウンセリング等の整備充実は、自殺率を下げるのに、功を奏すると思う。「敵」が明確な自殺には、対処ができる。「希望」の提示によって、自殺を思い留まらせることは可能になる。

しかし、問題なのは、その男性の2倍は居るだろうと思われる「死にたいけど死ねない」女性の方だ。この自殺に対しては、物理的な対策では、何も先が見えてこない。まわりを巻き込んで、もっと増殖していくような気配がある。なぜなら、そこには、明確な、「敵」が存在しないから。病院へ行くほどでもない慢性的な「鬱」状態が、自殺未遂の病理だから。



女性の自殺未遂者の多くが「服薬,四肢切創」を手段に選ぶ。確実に死ねない手段を選ぶということは、それは「生きたい」というシグナルでもある。でも、生きていても「希望」がない。あまりにも「退屈」である。でも「生きたい」メッセージとして、「服薬,四肢切創」を繰り返す。

そんな若い女性達に、私達・大人は、胸を張って「あきらめるな」と説教できるのだろうか。女性作家の鷺沢萠さんは、著書「ありがとう」に、こんなコトバを遺して自殺している。

『「あきらめない」ことは、さして難しいことではない。さして難しくないことをするときに、殊更に胸を張って、声高に主張する必要はない。世の中にはどうやってもあきらめる他ないことがたくさんある。山ほどある。厭になるくらいある。そうしたことごとの瓦礫の山の上に途方に暮れて立ち尽くしながら、血をしたたらせて「あきらめた」経験が一度でもあれば、「あきらめない」をただキレイなことばとして受けとめることもないはずだ。
「あきらめるな」は他人に向かって言うことばではない。
自分に向かって、黙ったまま言うことばだ』


この日本に、「あきらめるな」と自分に向かって、黙ったまま問い続けているオッサンは、どれだけいるのだろうか。「あきらめるな」「信じろ」と文句なしに美しいことは言うぱかりで、現実に目を背けている大人が、この世には、多すぎる。

自殺大国・日本の、その大きな分母になっている「自殺未遂」の病巣は、「あきらめるな」と言うばかりの大人達が創った退屈な社会にある。大人達が、こころの中で「あきらめるなという内戦」を本当に潜り抜けてきたかどうか・・・その後悔と後ろめたさにある。
自殺者数ではなく、自殺未遂者数に正面から向き合わない大人の機関の脆弱さが、自殺大国・日本の本質的問題である。

執筆者: 中村修治/へそ社長