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黙って聞けっ。
いろいろな会社で、今年も、新入社員評を聞く季節になった。40才も過ぎると、自分自身が新入社員だった頃のこともすっかり忘れ、『そんなの意味があるのですか?』と言いたげな、小利口な新入社員の諸君には、ひと言、言いたくなる。
理想の上司&良いリーダーとは何だろう?
面白いデータがあった。
神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏さんが、「経験がリーダーをつくるのか」というコラムのなかで、こんな調査結果を披露されている。
『2006年に、リーダーシップの体系的な育成で定評のある米国企業群を調査した。そのときにそれこそほぼあらゆる会社で耳にしたのは、ロミンガー社(Lominger)の70-20-10という数字だ。ロミンガーという社名は、CCL(センター・フォー・クリエーティブ・リーダーシップ。リーダーシップの研究と研修を扱う機関)の創設メンバーの二人(LombardoとEichinger)の名前を連ねた(Lom-inger)ものだ。
ここは今、米国でもっとも注目されているリーダーシップ育成機関として知られている。ここで経営幹部としてリーダーシップをうまく発揮できるようになった人たちに、「どのような出来事が役立ったか」を聞くと、なんと70%が経験、20%が薫陶、10%が研修という結果であった』。
新入社員を、良き社会人にして、良いリーダーへと育てるために必要なものは、「経験」と「薫陶」が、合わせて90%というわけだ。
「薫陶」は、辞書には「人徳・品位などで人を感化し、よい方に導くこと」とあるから・・・。
「人徳・品位ある上司」が、仕事の「経験」を上手に導くために、「部下を感化させる」ことが、良いリーダーの育成方法ということになるのだろう。
リーダー教育とは、「感化」である。
「感化」とは、理論ではない、コトバではない。頭で理解することではない。
身体で学習することだ。毛穴から染み込むように、血肉になることだ。
「社風」が、社員教育にとって重要になるのは、「黙っていても学ぶものが、感じるものが、会社にあるかどうか」という話である。
だから、新入社員たちのリーダーの資質を見極めるポイントは、『そんなの意味があるのですか?』と言うか、言わないか?そんな顔をしているか、しないか?である。
働いて数日の経験で、いま上司が言ったことの意味や価値が自分で語れない。自分にその語彙がないのなら黙って聞いておく。それをハンを押したように「役に立つんですかぁぁぁっ?」だと?
そんな新入社員には、「いっぺんおまえの父ちゃんを連れてこい」と言った方がよい。
「感化」された経験のないものは、
「感化」させる大切さがわからない。
身に染みていない。
「黙って聞いて学ばせる」ことが、教育である。
高校時代の難しい数学や物理の勉強が、何の役に立つかはわからなかった。
大学の時の、マルクスやなんちゃらも、実際のところ、いまだに何の役に立ったかは不明である。
しかし、それをやるしかなくて、嫌々でもやりながら、ここからどう脱出するかを模索する。
自分でそれが役立つかどうかを発見し、次を創造すること自体が大切なのであって・・・
最初から、合理的な道があるということを教えるのは、教育ではない。
「黙って聞け」と言える気風を持つことが、リーダーの条件であり。
「黙って聞いて学んだ経験」の有無が、リーダーになる条件である。
「薫陶」を受ける。最近、耳にすることが少なくなったが、実は、リーダー教育に一番大切なことなのだと考える。そもそもは、「陶器をつくるときに、香を焚いて薫りを染みこませていく」ところから生まれた言葉であるらしい。
新芽が出て木々や花々の香り立つ春に、新入社員研修がある日本。テクニックや常識を学ばせることに躍起になるより、どんな会社の薫りを染みこませるのかを優先して考えた方がいい。
ちなみに、人間の五感の中で一番記憶と直結するのは、嗅覚=「匂い」らしい。
ということは、良い「社訓」は、良い「社薫」になるということだな・・・。きっと。