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『セックスはなぜ楽しいか?』

2010年06月17日

セックスはなぜ楽しいかが判ると寂しくなるぞ。
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私は、普通の男である。案の定、タイトルに釣られて、この本を読んだ。お陰で『セックスはなぜ楽しいか』が判った。しかし、判った気になると、ちょこっとセックスは楽しくなくなる。
そういう罪な本なのである。

著者は、『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞&コスモス国際賞を受賞した著者のジャレド・ダイアモンドである。


2005年に発表した『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』は、現代社会の文明の持続可能性についての本質を問うた話題作で、全世界でベストセラーとなったのでご存じの読者も多いと思う。


この『セックスはなぜ楽しいか』は、そのベストセラー発表の8年前=1997年(日本発売は1999年)の著書である。ジャレド・ダイアモンドは、文明や人類史を語る前に、セックスについて言及していたのである。先ずは、人間とは何かを知り、その人間が創造した文明について語る・・・その流れは、至極全うな気がする。


著者のセックスへの論点は、明解である。直立二足歩行や大型の脳と並んで、閉経や娯楽のためのセックスが重要な要因となり、人間は火を使いはじめ、言語や芸術や書字を発展させたのではないかと考えているのである。身体から体毛がなくなり、火を使う生活をするようになったから人はセックスを楽しむようになったという理屈ではなく、セックスや女性の排卵隠蔽は、もっと深い戦略があるのではないかというのである。


著書の中で、人間のセックスは、他の生物とは、決定的に違う性生活を営んでいるのだと指摘されている。
①ヒトは仲間に隠れてセックスをする
②セックス後も男女のペア関係は続け→多くが結婚する
③社会の一員としてテリトリーを共有しながら男女で子供の世話をする
④女性の排卵は隠されている
⑤ヒトは、妊娠するのが不適切な時でもセックスをする
⑥閉経後の生きる期間が長い


その中でも『セックスはなぜ楽しいか』のタイトルに直結する女性の排卵隠蔽戦略に関する下記の一文は、男にとっては衝撃である。



「排卵が隠されるようになったのは、われわれの祖先がまだ乱婚あるいはハーレム型で暮らしていた頃だった。その頃、祖先の猿人の女たちは、排卵を隠すことによって多くの男たちに性的恩恵を分け与えることができるようになった。恩恵をあずかった男たちは、だれひとりとして彼女の産む子の父親が自分であると確信できなかったが、父親が自分かもしれないという可能性は全員に残されていた。その結果、潜在的に殺人者となる可能性をもっている男たちは、だれひとりとして女の子供に害を与えようとはせず、なかには子供を守ったり、食べ物を与えたりするものまでいた。
女はこうした目的で排卵の隠蔽を進化させると、今度はそれを利用して、優秀な男を選び、誘惑したり脅かしたりしながら男を家にとどまらせ、自分の産んだ子にたくさんの保護や世話を与えさせた。男は自分がその子の父親であることを知っているから、安心して子育てに励む。」
ジャレド・ダイアモンド『セックスはなぜ楽しいか』より

女性は、一生の内に子供を産む数に制限がある。子育てによって失うチャンスも大きい。だから、女性にとって自分の産んだ子供を殺されたりするのは、大きなリスクなわけである。
だから、排卵を隠蔽し、仲間に隠れてセックスをして、いちばんマイホームパパになってくれそうな相手を囲い込んでいく(実は、それが本当の父親でなくても良い・・・)。大きなリスクを回避して、安定した子育て環境を創るために、いつでも楽しめるセックス=コミュニケーションを進化させてきたわけだ。

この仮説が正しいとしたら、人間の男は、女性の排卵隠蔽戦略にまんまと乗っていることになる。人間の男性の遺伝子は、女性に騙され続けているということだ。

しかし、自分の遺伝子を正確に複製できずに、騙され続けていく遺伝子は、いずれ滅びる。・・・と言うことは、人間の男性は、滅びる過程にいる生物ということになる。男って、いったい・・・。ひぇぇぇぇっ。

ジャレド・ダイアモンドの別著『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』のアマゾンの商品説明には、次のような一説がある。



「社会が繁栄すると人口が増える。人口が増えると、農作物の無理な増産やエネルギー消費量の拡大などで環境に過大な負荷が生じる。その結果、食糧・エネルギー不足となり、多すぎる人間が少なすぎる資源を巡って争うなど、共同体内部の衝突が激化する。飢餓・戦争・病気によって人口は減少し、社会は崩壊する ――こういう具合だ」

文明崩壊の引き金は、間違いなく人間の男性が引いている。それは、騙され続けていく遺伝子を組み込まれた我々男達の宿命であり、自然淘汰のひとつであると・・・『セックスはなぜ楽しいか?』が判って、判った。






執筆者: へそ社長